はじめに
「最終チェックまでしたのに、なぜか配送ミスが起こる」──そんな声が、物流現場では頻繁に聞かれます。ラベル照合、目視確認、スキャン完了──形式上の“チェック”は行っているはずなのに、それでも誤配送はゼロにならない。
この記事では、社内SEとして出荷業務のトラブル調査に携わった私が、「チェックの限界」と「それでもミスが起きる理由」、そして“しくみで減らすアプローチ”について、実例を交えて解説します。

「最後に確認したのに間違ってた…」って、本当に現場を凹ませるんですよね😊
事例①:正しいラベルでも誤配送
ある現場で発生した誤配送は、「正しいラベルが貼られていたのに、間違った商品が届いた」というもの。調査の結果、同じ商品棚に異なるSKUの商品が並び、ピッキング者が取り間違えたにもかかわらず、ラベルは“そのまま正しく”貼られていたのです。
これは、「ラベルが正しい」=「商品も正しい」という前提が崩れたケースです。チェック工程が“情報”の整合性に偏り、“現物”との照合が弱かったことが原因でした。
事例②:スキャン漏れの“偽チェック完了”
別の事例では、スキャンチェックが完了マークを出していたにもかかわらず、実際には1件が読み取られていないという不備が発生。作業者は「スキャンしたつもり」だったものの、実際には機器の読み取りエラーがあったにもかかわらず気づかず完了ボタンを押していたのです。
ここでの問題は、“チェック操作が完了している=チェック内容も正しい”と見なされてしまう構造です。確認した「操作の記録」はあっても、「確認した内容の記録」は不十分だったのです。
限界①:チェック工程の“前提依存”
多くの出荷現場では、「最終チェック=ラベル照合」となっていますが、この前提自体がリスクの温床です。なぜなら、ラベルやデータが“すでに正しい”という前提に依存しているためです。
この構造では、上流でミスがあった場合、チェックは機能しません。チェック工程とは、上流のミスを吸収する“安全網”であるべきなのに、そこがただの“儀式”になっていたのです。
限界②:“人”に委ねられすぎた工程
目視チェック、スキャンチェック、声出し確認──いずれも重要な手段ですが、いずれも“作業者の意識と記憶”に依存している限り、ヒューマンエラーの回避には限界があります。
私は一連の分析から、「確認作業は人がやるが、結果の保証は仕組みが担う」構成にするべきと結論づけました。
改善:チェック工程を“情報と動作のクロス検証”へ
改善策として私は以下を導入しました:
- Wスキャン方式(商品バーコード+出荷リスト)でクロス照合
- 誤った順番・商品はブザーで警告、作業を強制中断
- 照合完了画面に「誰が」「いつ」照合したかを記録
この構成により、「チェックしたはず」と「チェック完了」はイコールではないことを、仕組み側が担保するようになり、再発率は大きく減少しました。
まとめ:最終チェックだけでは、守れない
「最終チェックでなんとかなる」は、現場にとって甘い幻想です。チェックの本質は、最終ラインでの“作業者の注意力”に委ねることではなく、仕組みとして「間違えてもすぐ分かる」「間違えにくい流れになっている」構造を作ることです。
最終チェックのミスは“最後”だから目立つだけであって、根本の原因はもっと前の段階にあります。だからこそ、社内SEとしては工程を俯瞰し、「なぜここでしか気づけないのか?」を問う必要があります。
ラベル照合の仕組み化、スキャン順の強制、再確認操作の導入──すべては「人がやるべきこと」と「仕組みで担うべきこと」を切り分け、最終チェックの“責任集中”を構造的に分散させる工夫です。
ミスをゼロにするには、最終チェックに依存しない工程設計が必要です。そしてその要は、「正しいことを人に委ねない」ではなく、「正しくあることを支える設計」です。

「チェックしてたのに…」って言葉、ほんとに切ないんですよね。でも、そこを支えるのがSEの腕の見せ所だと思います😊
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