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【送り状は不要?】物流現場のデジタル化の課題と解決策 | 現役SEの物流改善ガイド

物流メソッド
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送り状とは?「ただの紙」ではない重要書類

送り状とは、荷物の発送元から配送先までの情報を記載した物流における「身分証明書」のようなものです。お客様情報、品名、個数、配送条件などの重要情報が記載され、物流の全工程でこの情報をもとに荷物が正しく届けられます。

一見すると「ただの紙切れ」に見えますが、実際には:

  • 契約上の証明書(輸送契約の証拠)
  • 税務上の重要書類(課税対象取引の証明)
  • 荷物の識別・追跡のキー情報
  • トラブル発生時の責任所在を明確にする証拠

と、多くの重要な役割を担っています。特に複数の運送業者を経由する場合、この送り状がなければ荷物の行き先が分からなくなり、最悪の場合は紛失につながります。

ペラペラ紙の矛盾-なぜ大事なものがこんなに脆いのか?

これほど重要な書類でありながら、送り状の多くは薄いコピー用紙かカーボン紙で作られています。風で飛んでいく、雨で滲む、破れやすい、紛失しやすい…と、その物理的特性は「重要書類」にはふさわしくないものです。

たまのSE
たまのSE

重要書類なのに「雨の日は大変」って、何かおかしくないですか?🤔

なぜこのようなギャップが生まれるのでしょうか?理由は主に以下の点にあります:

  • コスト優先の業界構造:物流業界は薄利多売が基本。一枚あたり数円の差が大きい
  • 大量発行の必要性:1日数千〜数万枚発行する現場も珍しくない
  • 複写の必要性:発送元、運送業者、届け先など複数の関係者が同じ情報を保持する必要がある
  • 現場で書き込む余白:配送状況や受領サインなど、輸送中に情報を追記するスペースが必要
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実際、私が改善に携わった物流センターでは、年間約100万枚の送り状が発行され、その保管や管理だけでも大きな業務負担となっていました。

紙である意味はあるのか?デジタル化の可能性

「iPadやスマホでいいじゃないか」「全部データでよくない?」という声が現場からも上がります。確かに技術的には可能でしょう。しかし、物流の世界ではそう単純にはいきません。

デジタル化の理想と現実のギャップ

理想的なデジタル送り状システムでは:

  1. 発送元でデータ作成 → クラウドに保存
  2. QRコードなどで荷物と紐付け
  3. 各物流拠点ではスキャンで情報確認
  4. 配達完了時はタブレットでサイン

このように、ペーパーレスなプロセスが構築できるはずです。実際、一部の大手物流企業では電子化が進んでいます。

しかし現実には:

  • 異なるシステム間の連携問題:中小の運送会社を含めた多様な業者間での共通規格やデータ連携が難しい
  • 設備投資の負担:全ドライバーにスマートデバイスを配布するコストは小規模事業者には大きい
  • アナログ環境との共存:個人宅や小規模店舗など、受取側がデジタル環境を持たないケースも多い
  • 法的要件と監査対応:紙の原本を要求する法律や監査要件がまだ多く存在する

物流は「つながる」ビジネス-一社だけでは変えられない

物流業界の最大の特徴は、その「連携性」にあります。荷物一つを届けるために、荷主、元請け物流企業、下請け運送会社、配送ドライバー、受取人など、多くの関係者が関わります。全ての関係者がデジタル対応できなければ、「紙→データ→紙」という非効率な変換作業が生まれるだけです。

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たまのSE
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「うちだけデジタル化しても…」と諦めがちですが、小さな一歩から始めることも大切です👍

私が改善を担当した企業でも、当初は「全部デジタル化しよう!」と意気込みましたが、取引先の運送会社からは「うちはまだタブレットを全ドライバーに配備できない」「紙の送り状もセットで出してほしい」といった要望が続出。結局、完全デジタル化は断念せざるを得ませんでした。

業界全体を変えるには、標準規格の策定や業界団体主導のデジタル化推進など、より大きな取り組みが必要です。

諦めない—現実的な「部分最適化」のアプローチ

「全てをデジタル化できない」からといって、現状維持に甘んじる必要はありません。私たちが導入した「部分最適化」のアプローチをご紹介します:

1. 社内保管分の電子化

運用上、必ず紙で発行する必要がある送り状でも、自社内での保管分はデジタル化することで大幅な効率化が可能です:

  • 送り状発行時に自動的にPDF保存
  • QRコードやバーコードと連携したデータベース構築
  • OCRを活用した紙の送り状のデータ化とクラウド保存

これにより、「あの送り状はどこ?」という無駄な探し物時間を削減し、トラブル発生時の迅速な対応が可能になりました。

2. ハイブリッドアプローチの導入

完全なペーパーレス化ではなく、場面に応じた使い分けも有効です:

  • 自社と大手配送会社間はデータ連携
  • 中小配送業者とのやりとりでは紙の送り状を併用
  • 倉庫内の作業ではタブレットやスマートグラスを活用
  • 配達完了証明など重要書類のみ紙で保管

こうした「できるところから」のアプローチは、全体最適化への段階的なステップとして機能します。

3. 紙の送り状の改良

紙を使い続ける部分については、その弱点を補強する工夫も重要です:

  • 耐水性のある用紙への変更
  • カラー印刷による視認性向上
  • バーコード・QRコードの併記でデジタルとのブリッジ
  • 簡易なラミネート加工による耐久性向上

まとめ:理想と現実のバランスを探る

送り状は、物流業界の縮図とも言えます。最新技術と伝統的手法が混在し、多様な事業者が協力し合う複雑な世界です。全てをデジタル化する理想を持ちつつも、現実との折り合いをつける柔軟さが求められます。

「紙かデジタルか」という二項対立ではなく、「いつ、どこで、誰が使うか」に応じた最適な形を選択していくことが、現実的な改善の第一歩です。物流業界全体のデジタル化は、一朝一夕に実現するものではありません。しかし、できることから着実に変えていく姿勢が、未来の完全デジタル化への道を切り拓くのではないでしょうか。

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