「DCの効率が悪い」と言われた社内SEのあなたへ
「物流コストを削減しろ」「DCの効率を上げてくれ」と経営陣から言われて困っていませんか?限られた予算とリソースの中で、既存システムを最大限活用すれば、DC効率は30%以上改善できます。
この記事では、高額なWMS導入を前提としない、社内SEならではの実践的な改善手法をご紹介します。Excel活用術から低予算システム連携まで、明日から始められる具体的なテクニックが満載です。

高額システムじゃなくても、工夫次第でDCは劇的に効率化できるんです!
DCとTC、知っておくべき基本的な違い
まず、ディストリビューションセンター(DC)とトランスファーセンター(TC)の違いを整理しましょう。この違いを理解することで、適切なシステム設計ができます。
項目 | DC(ディストリビューションセンター) | TC(トランスファーセンター) |
---|---|---|
主な機能 | 保管・在庫管理・流通加工 | 仕分け・中継・積み替え |
在庫保有 | あり(数日~数週間) | なし(当日処理) |
システム要件 | 在庫管理・ロケーション管理 | 配送計画・車両管理 |
作業特性 | ピッキング・梱包中心 | 仕分け・積み込み中心 |
投資優先度 | WMS・自動化設備 | 搬送システム・ソーター |
社内SEとして重要なのは、自社の施設がDC寄りかTC寄りかを見極めることです。これにより、投資すべき技術領域が決まります。
DC効率化で社内SEが押さえるべき3つの視点
- データの可視化:現状を数値で把握できているか
- システム連携:既存システム間の情報の流れは最適か
- 自動化:人手作業をシステムで代替できる部分はないか
DCでよく起こる5つの非効率とシステム的解決策
現場でよく見られる非効率な状況と、社内SEとしてできる具体的な対策をご紹介します。高額投資は必要ありません。
1. 「在庫がどこにあるか分からない」問題
症状:商品を探すのに1件あたり5分以上かかる
システム的解決策:
【Excel + QRコード活用】
1. 商品マスタにロケーション情報を追加
2. スマホのQRコードリーダーアプリを活用
3. 商品コードをQRコード化してラベル印刷
【VBA自動化例】
Sub ロケーション検索()
Dim 検索コード As String
検索コード = InputBox("商品コードを入力してください")
Dim 結果 As Range
Set 結果 = Range("A:A").Find(検索コード)
If Not 結果 Is Nothing Then
MsgBox "商品は " & 結果.Offset(0, 2).Value & " にあります"
Else
MsgBox "商品が見つかりません"
End If
End Sub
導入コスト:5万円以下(ラベルプリンタ + QRコードシール)
2. 「出荷指示と実作業のタイムラグ」問題
症状:急ぎの出荷指示が現場に伝わらない
システム的解決策:
- 販売管理システムから自動でメール通知
- Slackやチャットワークとの連携
- 共有フォルダの監視機能でリアルタイム更新
【Power Automate活用例】
トリガー: Excel Online(出荷指示ファイル)の更新
↓
条件: 「緊急」フラグがONの場合
↓
アクション: Teams/Slackに自動通知 + 担当者にメール送信
3. 「棚卸の精度が悪い」問題
症状:帳簿在庫と実在庫が常に合わない
システム的解決策:
- 日次・週次の部分棚卸システムの構築
- 差異発生時の自動アラート機能
- ABC分析による重点管理商品の特定
【Access活用:棚卸管理システム】
テーブル構成:
- 商品マスタ(商品コード、商品名、重要度)
- 在庫実績(日付、商品コード、理論在庫、実在庫、差異)
- 棚卸計画(実施日、対象エリア、担当者)
クエリ例:
SELECT 商品コード, SUM(差異) as 累積差異
FROM 在庫実績
WHERE 日付 >= DateAdd("m", -1, Date())
GROUP BY 商品コード
HAVING ABS(SUM(差異)) > 10
4. 「ピッキングリストが非効率」問題
症状:同じ通路を何度も往復している
システム的解決策:
- ロケーション順でのピッキングリスト自動ソート
- 最短ルート計算アルゴリズムの実装
- バッチピッキングによる効率化
【Excel VBA:ピッキングリスト最適化】
Sub ピッキングリスト最適化()
' ロケーション番号でソート(A-01-01-01形式)
Range("A1").CurrentRegion.Sort _
Key1:=Range("D1"), Order1:=xlAscending, _
Header:=xlYes
' 同一通路の商品をグループ化
Dim i As Long
For i = 2 To UsedRange.Rows.Count
If Left(Cells(i, 4), 4) = Left(Cells(i - 1, 4), 4) Then
Cells(i, 6) = Cells(i - 1, 6) ' 同一バッチ番号
Else
Cells(i, 6) = Cells(i - 1, 6) + 1 ' 新しいバッチ
End If
Next i
End Sub
5. 「作業実績が把握できない」問題
症状:誰がいつ何をしたか分からない
システム的解決策:
- Google FormsとGoogle Sheetsでの作業実績収集
- QRコードによる作業開始・終了の記録
- Power BIでのリアルタイム可視化

こういう小さな改善の積み重ねが、結果的に大きな効果を生むんですよね!
既存システムを活用したDC効率化テクニック
多くの企業では、販売管理システムや会計システムが既に導入されています。これらの既存資産を最大限活用することで、追加投資を最小限に抑えながら大きな効果を得られます。
販売管理システムとの連携強化
連携項目 | 従来の問題 | システム連携後 |
---|---|---|
出荷指示 | 紙やメールで伝達 | システムから自動でピッキングリスト生成 |
在庫更新 | 手作業で入力 | 出荷確定と同時に自動減算 |
進捗管理 | 電話・メールで確認 | リアルタイムでステータス確認可能 |
Microsoft 365を活用したDC管理
- SharePoint:作業手順書・図面の一元管理
- Power Automate:定型業務の自動化
- Power BI:KPI可視化とリアルタイム監視
- Teams:現場とのリアルタイムコミュニケーション
【Power BI活用:DC KPIダッシュボード】
主要指標:
- 時間当たりピッキング件数
- ピッキング精度(エラー率)
- 在庫回転率
- 作業者別生産性
- エリア別稼働率
データソース:
- Excel作業実績ファイル
- Access在庫管理DB
- SharePointリスト(計画データ)
低予算で実現できるIoT活用
- Raspberry Pi + センサー:温度・湿度の自動記録
- 格安Webカメラ:作業状況の遠隔監視
- スマートフォンアプリ:バーコードスキャン機能
Excel・Accessで構築するDC管理システム実例
高額なWMSを導入する前に、Excel・Accessでプロトタイプを作成することをお勧めします。実際に使いながら要件を固めることで、本格導入時の失敗リスクを大幅に削減できます。
Excelベース:簡易在庫管理システム
【ファイル構成】
1. 商品マスタ.xlsx
- 商品コード、商品名、標準ロケーション、安全在庫
2. 日次在庫.xlsx
- 日付、商品コード、入庫数、出庫数、残高
3. ピッキングリスト.xlsx
- 出荷番号、商品コード、数量、ロケーション、ステータス
【VBA機能】
- 在庫照会(商品コード入力で瞬時に残高表示)
- ピッキングリスト印刷(ロケーション順ソート済み)
- 日次集計(売上・在庫回転率自動計算)
- アラート機能(安全在庫切れ警告)
Accessベース:本格DC管理システム
【テーブル設計】
商品マスタ:商品の基本情報
ロケーションマスタ:棚の位置情報
在庫トランザクション:入出庫の履歴
作業指示:ピッキング・補充の指示
作業実績:実際の作業記録
【フォーム設計】
1. 在庫照会フォーム(商品検索・ロケーション表示)
2. ピッキング指示フォーム(バーコード対応)
3. 入庫処理フォーム(検品・ロケーション指定)
4. 実績入力フォーム(作業時間・数量記録)
【レポート機能】
- 日次作業実績表
- 在庫一覧表(ABC分析付き)
- ピッキングリスト(最適ルート順)
- 月次KPIレポート
スマホアプリとの連携
- QRコードスキャン:作業開始・終了の記録
- 写真撮影:商品状態・作業証跡の記録
- 音声入力:数量確認・特記事項の記録
- リアルタイム更新:クラウド同期で即座に反映
本格WMS導入前にできる10の準備
将来的にWMSを導入する場合でも、事前準備をしっかり行うことで導入成功率が劇的に向上します。社内SEとして今からできることを整理しました。
- 現状の作業フローを詳細に文書化→要件定義の精度向上
- 商品マスタの整備・統一→データ移行の円滑化
- ロケーション体系の標準化→システム設定の効率化
- バーコード・QRコードの導入→自動認識基盤の構築
- ネットワーク環境の整備→無線LAN・有線LANの最適化
- 現場スタッフのITリテラシー向上→導入時の混乱回避
- 既存システムとの連携方式検討→API・CSV・DB直結の選択
- KPI測定の仕組み構築→導入効果の定量評価
- データバックアップ体制確立→システム移行時のリスク回避
- 運用ルールの明文化→システム活用の標準化
WMS選定時のチェックポイント
確認項目 | 重要度 | チェックポイント |
---|---|---|
既存システム連携 | ★★★ | 販売管理・会計システムとのAPI連携可能性 |
カスタマイズ性 | ★★★ | 自社特有の業務に対応できる柔軟性 |
操作性 | ★★☆ | 現場スタッフが直感的に使えるUI |
拡張性 | ★★☆ | 将来の業務拡大・複数拠点対応 |
サポート体制 | ★★★ | 導入支援・運用サポートの充実度 |
ROI計算:DC効率化投資の効果測定
経営陣への提案時に必要な投資対効果の計算方法をご紹介します。数値で示すことで、予算承認の確率が大幅に向上します。
【ROI計算例:中規模DC(従業員20名)】
■現状コスト(年間)
・ピッキング作業:20名 × 250万円 = 5,000万円
・在庫管理:2名 × 300万円 = 600万円
・ミス対応コスト:500万円
・管理間接費:300万円
合計:6,400万円
■改善後コスト(年間)
・ピッキング作業:15名 × 250万円 = 3,750万円(25%効率化)
・在庫管理:1名 × 300万円 = 300万円(システム化)
・ミス対応コスト:100万円(80%削減)
・システム運用費:200万円
・管理間接費:100万円
合計:4,450万円
■年間削減効果:1,950万円
■システム投資額:500万円(Excel/Access改善)
■投資回収期間:3.1ヶ月
まとめ:社内SEが実現するDC効率化ロードマップ
高額なシステム投資なしでも、DCの効率化は十分に実現可能です。以下のステップで段階的に改善を進めることをお勧めします。
- 【1ヶ月目】現状分析・課題の可視化(Excel活用)
- 【2ヶ月目】基本的なロケーション管理導入
- 【3ヶ月目】ピッキングリスト最適化・QRコード活用
- 【4-6ヶ月目】既存システムとの連携強化
- 【7-12ヶ月目】Access活用による本格的なシステム構築
- 【2年目以降】WMS導入の検討・実行
重要なのは、小さく始めて効果を実証し、段階的に拡大することです。社内SEの強みである「現場の課題理解」と「技術的な解決策」を組み合わせることで、必ず成果を出せます。

DC効率化は一朝一夕にはいきませんが、着実に改善を積み重ねれば必ず大きな成果につながります!🚀
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