はじめに
Windows11にアップデートしたら、こんなトラブルに遭遇していませんか?
- 昨日まで使えていたNASに突然アクセスできなくなった
- 「組織のセキュリティポリシーによって非認証のゲストアクセスがブロックされている」と表示される
- NASへのファイル転送が異常に遅くなった
- Buffalo LinkStationやI-O DATA LANDISKが見えなくなった
これらはすべて、Windows 11 24H2以降のセキュリティ強化が原因です。私は社内SEとして5社のグループ会社でNAS接続トラブルに対応してきましたが、この問題は非常に多く発生しています。
この記事では、「アクセスできない」「遅い」それぞれの原因と対処法を、Windows 11 Pro/Home別に解説します。

Windows Updateで突然NASに繋がらなくなる問い合わせ、本当に多いです。原因がわかれば対処は簡単なので、落ち着いて対応しましょう💻
まず確認:あなたの症状はどっち?
NASトラブルは大きく2つのパターンに分かれます。症状によって対処法が異なるため、まず切り分けを行いましょう。
| 症状 | 主な原因 | 対処法 |
|---|---|---|
| NASが見えない・アクセス拒否される | ゲストログオンのブロック(24H2〜) | 対処法1〜3 |
| NASにアクセスできるが転送が遅い | SMB署名の強制有効化(24H2〜) | 対処法4 |
| 古いNASだけアクセスできない | SMB1.0の無効化 | 対処法5 |
切り分けの質問
以下の質問で原因を特定できます。
Q1. エラーメッセージは表示されますか?
- 「組織のセキュリティポリシーによって非認証のゲストアクセスがブロック」→ ゲストログオン問題
- 「ネットワークパスが見つかりません」→ SMB1.0またはネットワーク設定問題
- エラーなし、でも遅い → SMB署名問題
Q2. 他のPCからは同じNASにアクセスできますか?
- Windows 10からはアクセスできる → Windows 11固有の問題
- どのPCからもアクセスできない → NAS側の問題の可能性
Q3. NASの機種は何ですか?
- Buffalo LinkStation/TeraStation旧機種 → SMB1.0問題の可能性
- I-O DATA LANDISK旧機種 → SMB1.0問題の可能性
- Synology/QNAP等の比較的新しいNAS → ゲストログオンまたはSMB署名問題
Windows 11 24H2で何が変わったのか
対処法に入る前に、なぜこの問題が起きているのかを理解しておきましょう。
変更点1:ゲストログオンのブロック
Windows 11 24H2以降、パスワードなしでNASにアクセスする「ゲストログオン」がデフォルトでブロックされるようになりました。
多くの家庭用・中小企業向けNASは、手軽さのためにパスワードなしで共有フォルダにアクセスできる設定になっています。この設定がセキュリティリスクと判断され、ブロック対象になりました。
変更点2:SMB署名の強制有効化
Windows 11 24H2以降、SMB通信時の「デジタル署名」がデフォルトで有効になりました。
SMB署名はセキュリティを高める機能ですが、CPU負荷が増加するため転送速度が大幅に低下します。実測で1/3程度まで速度が落ちるケースもあります。
変更点3:ネットワークプロファイルの変更
Windows Updateのタイミングで、ネットワークプロファイルが「プライベート」から「パブリック」に変更されてしまうケースがあります。パブリックネットワークではファイル共有が制限されるため、NASにアクセスできなくなります。

Microsoftのセキュリティ強化の方針は理解できますが、事前告知なしで変更されると現場は大混乱ですよね…😅
対処法1:ネットワークプロファイルの確認(まず最初に)
最も簡単に確認・修正できる項目です。まずここから確認しましょう。
確認手順
1. 「設定」→「ネットワークとインターネット」を開く
2. 接続中のネットワーク(イーサネットまたはWi-Fi)をクリック
3. 「ネットワークプロファイルの種類」を確認
- 「パブリック」になっていたら「プライベート」に変更
プライベートネットワークに変更後、NASにアクセスできるか確認してください。これで解決すれば以降の対処は不要です。
対処法2:資格情報マネージャーへの登録(推奨)
セキュリティを維持したままNASにアクセスできるようにする方法です。Microsoftが推奨している対処法でもあります。
手順1:NAS側でユーザーを作成
まず、NASの管理画面にログインし、アクセス用のユーザーアカウントを作成します。
【Buffalo LinkStation/TeraStationの場合】
1. ブラウザでNASのIPアドレスにアクセス(例:http://192.168.1.100)
2. 管理者としてログイン
3. 「共有」→「ユーザー」→「ユーザーの作成」
4. ユーザー名とパスワードを設定
【I-O DATA LANDISKの場合】
1. ブラウザでNASのIPアドレスにアクセス
2. 管理画面にログイン
3. 「ユーザー設定」→「追加」
4. ユーザー名とパスワードを設定
【Synologyの場合】
1. DSM管理画面にログイン
2. 「コントロールパネル」→「ユーザーとグループ」→「作成」
3. ユーザー名とパスワードを設定
手順2:Windows側で資格情報を登録
1. 「コントロールパネル」を開く
2. 「ユーザーアカウント」→「資格情報マネージャー」
3. 「Windows資格情報」タブを選択
4. 「Windows資格情報の追加」をクリック
5. 以下を入力:
- インターネットまたはネットワークのアドレス:NASのIPアドレス(例:\\192.168.1.100)
- ユーザー名:手順1で作成したユーザー名
- パスワード:手順1で設定したパスワード
6. 「OK」をクリック
登録後、NASにアクセスできるか確認してください。

この方法が最もセキュアです。社内SEとしては、まずこの方法を試してから応急対応を検討することをおすすめします👍
対処法3:ゲストログオンの有効化(応急対応)
NAS側でユーザー作成ができない場合や、とにかく急いでアクセスを復旧したい場合の応急対応です。
⚠️ 注意:この設定はセキュリティを低下させます。対処法2が可能な場合はそちらを優先してください。
Windows 11 Proの場合(グループポリシー)
1. Windowsキー + R で「ファイル名を指定して実行」を開く
2. 「gpedit.msc」と入力してEnter
3. 以下の順に展開:
コンピューターの構成
→ 管理用テンプレート
→ ネットワーク
→ Lanman ワークステーション
4. 右側の「安全ではないゲストログオンを有効にする」をダブルクリック
5. 「有効」を選択して「OK」
6. PCを再起動
Windows 11 Homeの場合(レジストリ)
Windows 11 Homeにはグループポリシーエディター(gpedit.msc)がないため、レジストリを直接編集します。
1. Windowsキー + R で「ファイル名を指定して実行」を開く
2. 「regedit」と入力してEnter
3. 以下のパスに移動:
HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Services\LanmanWorkstation\Parameters
4. 右側の空白部分を右クリック →「新規」→「DWORD (32ビット) 値」
5. 名前を「AllowInsecureGuestAuth」に変更
6. ダブルクリックして「値のデータ」を「1」に設定
7. PCを再起動
コマンドで一括設定(管理者向け)
管理者権限のコマンドプロンプトで以下を実行します。
reg add "HKLM\SYSTEM\CurrentControlSet\Services\LanmanWorkstation\Parameters" /v AllowInsecureGuestAuth /t REG_DWORD /d 1 /f
対処法4:SMB署名の無効化(速度改善)
NASにはアクセスできるが、ファイル転送が異常に遅い場合の対処法です。
⚠️ 注意:SMB署名はセキュリティ機能です。社内ネットワークなど信頼できる環境でのみ無効化してください。
Windows 11 Proの場合(グループポリシー)
1. Windowsキー + R で「gpedit.msc」を実行
2. 以下の順に展開:
コンピューターの構成
→ Windowsの設定
→ セキュリティの設定
→ ローカルポリシー
→ セキュリティオプション
3. 「Microsoft ネットワーク クライアント: 常に通信にデジタル署名を行う」をダブルクリック
4. 「無効」を選択して「OK」
5. PCを再起動
Windows 11 Homeの場合(レジストリ)
1. Windowsキー + R で「regedit」を実行
2. 以下のパスに移動:
HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Services\LanmanWorkstation\Parameters
3. 「RequireSecuritySignature」をダブルクリック
- 存在しない場合は新規作成(DWORD 32ビット)
4. 「値のデータ」を「0」に設定
5. PCを再起動
PowerShellで設定(管理者向け)
Set-SmbClientConfiguration -RequireSecuritySignature $false -Confirm:$false

SMB署名を無効にすると、転送速度が劇的に改善することがあります。ただし、セキュリティとのトレードオフなので慎重に判断してください⚖️
対処法5:SMB1.0の有効化(旧NAS向け・非推奨)
Buffalo LinkStation/TeraStationの旧機種、I-O DATA LANDISKの旧機種など、SMB1.0にしか対応していないNASの場合に必要な設定です。
⚠️ 重大な警告:SMB1.0には深刻なセキュリティ脆弱性があります。ランサムウェア攻撃の標的になりやすく、Microsoftも使用を強く非推奨としています。可能な限りNASの買い替えを検討してください。
SMB1.0の有効化手順
1. 「コントロールパネル」を開く
2. 「プログラム」→「Windowsの機能の有効化または無効化」
3. 「SMB 1.0/CIFS ファイル共有のサポート」を探す
4. 展開して「SMB 1.0/CIFS クライアント」にチェックを入れる
5. 「OK」をクリック
6. PCを再起動
SMB1.0のリスクと代替策
| リスク | 説明 |
|---|---|
| ランサムウェア攻撃 | WannaCryなどのマルウェアはSMB1.0の脆弱性を悪用 |
| 中間者攻撃 | 通信の盗聴・改ざんが可能 |
| 自動無効化 | 一定期間使用しないとWindowsが自動的にSMB1.0を無効化 |
代替策:
- NASのファームウェアをアップデートしてSMB2.0以上に対応させる
- SMB2.0以上に対応した新しいNASに買い替える
- どうしてもSMB1.0を使う場合は、閉域ネットワークで運用する
社内SE向け:一括設定方法(GPO)
複数台のPCに設定を適用する必要がある場合、グループポリシーで一括設定できます。
ゲストログオンの一括有効化
【Active Directory環境の場合】
1. グループポリシー管理コンソールを開く
2. 対象のOUに新しいGPOを作成
3. 以下の設定を有効化:
コンピューターの構成
→ 管理用テンプレート
→ ネットワーク
→ Lanman ワークステーション
→ 「安全ではないゲストログオンを有効にする」を「有効」
SMB署名の一括無効化
【Active Directory環境の場合】
1. グループポリシー管理コンソールを開く
2. 対象のOUにGPOを作成または編集
3. 以下の設定を無効化:
コンピューターの構成
→ Windowsの設定
→ セキュリティの設定
→ ローカルポリシー
→ セキュリティオプション
→ 「Microsoft ネットワーク クライアント: 常に通信にデジタル署名を行う」を「無効」
電話案内テンプレート
【NASにアクセスできないという問い合わせを受けた時】
「Windows 11のアップデートでセキュリティ設定が変更された影響です。
まず、他のPCからは同じNASにアクセスできるか確認していただけますか?
→他のPCからはアクセスできる場合:
お使いのPCの設定変更が必要です。リモートで対応しますので、
○○時頃にお伺いしてもよろしいでしょうか?
→どのPCからもアクセスできない場合:
NAS側に問題がある可能性があります。NASの電源ランプは正常に点灯していますか?」

GPOで一括設定できると、同じ問い合わせに何度も対応する必要がなくなります。AD環境がある会社は活用しましょう📋
メーカー別対応情報
主要NASメーカーの公式対応情報へのリンクです。
| メーカー | 対象製品 | 対応状況 |
|---|---|---|
| Buffalo | LinkStation/TeraStation | 公式FAQで対処法を案内 |
| I-O DATA | LANDISK/RECBOX | 公式FAQで対処法を案内 |
| Synology | DSシリーズ | DSM設定でSMB署名対応可能 |
| QNAP | TSシリーズ等 | QTS設定で対応可能 |
各メーカーのサポートページで最新情報を確認することをおすすめします。特に旧機種の場合、Windows 11非対応と明記されているケースがありますので、買い替えを検討してください。
まとめ:対処の優先順位
Windows 11 24H2以降でNASにアクセスできない・遅い問題は、セキュリティ強化が原因です。以下の優先順位で対処することをおすすめします。
【推奨される対処の順序】
1. ネットワークプロファイルの確認(プライベートになっているか)
→ これで解決すれば最も安全
2. 資格情報マネージャーへの登録(NASにユーザー作成 + Windows側で登録)
→ セキュリティを維持したまま解決できる
3. ゲストログオンの有効化(応急対応)
→ 2が難しい場合の次善策、セキュリティは低下
4. SMB署名の無効化(速度改善が必要な場合)
→ 転送速度優先の場合
5. SMB1.0の有効化(旧NAS向け・非推奨)
→ 最終手段、NAS買い替えを強く推奨
長期的には、NAS側でユーザー認証を設定するか、SMB2.0以上に対応したNASへの移行を検討してください。

「繋がらない!」と焦る気持ちはわかりますが、セキュリティとのバランスを考えて対処しましょう。応急対応で終わらせず、根本解決を目指すのが社内SEの仕事です💪


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