【繊細さが武器になる】ひとり社内SEの強みと葛藤 – 性格特性から考える適性と向き合い

はじめに

「ちょっと繊細すぎるかな…」そんな自己認識を持ちながら、日々現場の課題と向き合う社内SEとして、私はある疑問を抱くようになりました。繊細な性格は、ひとり社内SEという立場に向いているのか、それとも向いていないのか。このブログでは、自身の経験から見えてきた「繊細さ」という特性が、社内SE業務においてどのような強みや課題をもたらすのか、率直に振り返ってみたいと思います。

相手の「困った」に寄り添える強み

繊細な性格の最大の強みは、ユーザーの困りごとに対する感度の高さです。先日も営業部の田中さんから「Excelの集計がうまくいかない」という相談を受けました。一見単純な問題に見えましたが、私は「なぜうまくいかないと感じているのか」という点まで掘り下げて話を聞きました。

結果として単なるSUM関数の問題ではなく、「異なるシートから特定条件のデータだけを抽出し、部門別に集計したい」という本質的なニーズが見えてきたのです。VLOOKUPとピボットテーブルを組み合わせたソリューションを提案したところ、「こんな便利な方法があったんだ！」と喜んでいただけました。

繊細な性格ゆえに「相手が何に困っているのか」を深く理解しようとする姿勢が、単なる技術的解決だけでなく、業務改善につながるソリューションを生み出せるのです。

細部へのこだわりが足かせになる瞬間

一方で、細部へのこだわりが強すぎるあまり、作業が進まなくなることも少なくありません。前回のAccess 2003の固定長ファイル出力対応では、「エクスポート仕様」の微調整に予想以上の時間を費やしてしまいました。

フィールドごとの桁数合わせ、空白埋めやゼロ埋めの形式調整、順番の入れ替え…。「これで完璧だ」と思っても、テスト出力すると微妙にずれている。そんな作業を何度も繰り返すうちに、「この細かい調整、本当に必要なのか？」と自問自答する日々。

完璧を求める繊細さが、時に業務の優先順位を見失わせることがあるのです。納期が迫る中、どこまで細部にこだわるべきか、常に葛藤が生まれます。

チーム内での心理的安全性の問題

ひとり社内SEの場合、多くの決断を自分一人で下さなければなりません。繊細な性格の人間にとって、これは大きなプレッシャーとなります。

先日導入したセキュリティソフトの設定では、「より厳格にすべきか」「ユーザーの使いやすさを優先すべきか」という判断に悩みました。厳格にしすぎれば「使いづらい」とクレームが来るかもしれない。緩めすぎれば「セキュリティホールを放置している」と批判されるかもしれない。

チームがあれば「こういう方針でいこう」と相談できるのですが、ひとりSEの場合はそうもいきません。結局、色々考えすぎて夜も眠れない日が続き、最終的には「まずは標準設定で様子を見よう」という無難な結論に落ち着きました。

しかし後日、「もっと早くセキュリティ設定を厳格化すべきだった」と指摘を受け、自分の判断に自信を失う経験も。繊細さゆえに「批判」をダメージとして受け止めやすいのは、ひとりSEとしての大きな課題です。

状況による適性の変化

結論から言えば、繊細な性格がひとり社内SEに「向いている」か「向いていない」かは、状況によって大きく変わります。

向いている状況：

• 少人数の組織で、ユーザーとの距離が近い環境
• 業務改善や効率化が主な仕事である場合
• 経営層が「IT投資の重要性」を理解している場合
• 自分のペースで仕事を進められる裁量がある場合

向いていない状況：

• 緊急対応や障害対応が頻発する環境
• 予算や人的リソースが極端に限られている場合
• 「今すぐ何とかして」という圧力が常にある場合
• 技術的判断に対する責任が重すぎる場合

自分の繊細さと上手に付き合う方法

私自身、繊細な性格と上手に付き合うために、いくつかの工夫をしています。

1. 判断の軸を明確にする：「ユーザーの業務効率」「セキュリティ」「コスト」など、判断軸を事前に整理しておくことで、迷いを減らします。
2. 「完璧」を手放す：「まずは動くものを」という考え方を意識的に取り入れ、後からブラッシュアップする習慣をつけています。
3. 外部の知見を積極的に取り入れる：ひとりでも、コミュニティやフォーラムなど「相談できる場」を持つことで、心理的な負担を減らしています。
4. 自分の感情と距離を置く：「今の不安や迷いは、繊細さゆえの反応かもしれない」と一歩引いて考えることで、客観性を保つようにしています。

まとめ

繊細な性格は、社内SEとして「ユーザーに寄り添える」という大きな強みをもたらします。一方で、「細部にこだわりすぎる」「批判に弱い」という特性は、時に業務の足かせになることも事実です。

しかし大切なのは、「繊細さ」という特性を否定するのではなく、それを活かせる環境や仕事の進め方を見つけること。私自身、繊細さゆえに気づける「ユーザーの本当のニーズ」を大切にしながらも、「完璧主義の罠」に陥らないよう意識しています。

結局のところ、繊細な性格がひとり社内SEに向いているかどうかは「どちらかと言えば向いている」と言えるでしょう。ただしそれは、自分の特性を理解し、状況に応じた対処法を身につけていくことが前提です。一人で全てを抱え込まず、時には助けを求める勇気も持ちながら、繊細さという「自分だけの武器」を磨いていきたいと思います。