はじめに
MySQL 8.0の延長サポートが2026年4月30日に終了します。
プレミアサポートは既に2025年4月で終了しており、現在は延長サポート期間中です。2026年4月以降はセキュリティパッチも提供されなくなるため、早めの移行が必要です。
この記事では、MySQL 8.0から8.4 LTSへの移行について、社内SE向けに解説します。AWS RDS・Aurora環境の対応状況や、現場で使えるチェックリストも掲載しています。

2025年10月時点でMySQL 8.0のシェアは約58%。まだ多くの環境で使われていますが、移行準備は早めに始めましょう📊
MySQL 8.0 サポート終了の概要
サポート期限
| サポート種別 | 終了日 | 状況 |
|---|---|---|
| プレミアサポート | 2025年4月30日 | 終了済み |
| 延長サポート | 2026年4月30日 | 終了予定 |
| サステイニングサポート | 無期限 | 実質EOL |
サステイニングサポートは「サポート」と名前がついていますが、新しいパッチやセキュリティ修正は提供されません。事実上のEOL(End of Life)です。
EOL後のリスク
- セキュリティパッチが提供されない:新たな脆弱性が発見されても修正されない
- 不具合の修正がない:新規バグへの対応が困難
- 互換性の問題:アプリケーションやライブラリのアップデートが制限される
- コンプライアンス違反:セキュリティ監査で指摘される可能性
社内SE向け 移行チェックリスト
移行作業の全体像を把握するためのチェックリストです。コピーして自社の管理表としてお使いください。
Phase 1:現状把握(今すぐ着手)
□ MySQL 8.0を使用している環境の一覧作成
- オンプレミスサーバー
- AWS RDS / Aurora
- GCP Cloud SQL / Azure Database
- VPS / レンタルサーバー
- Docker / コンテナ環境
- 開発環境(ローカル、CI/CD)
□ 各環境のMySQLバージョン確認
SELECT VERSION();
□ mysql_native_password 使用有無の確認
SELECT user, host, plugin FROM mysql.user;
□ 削除予定の構文(SHOW PROFILE等)の使用有無確認
Phase 2:テスト・検証
□ アップグレードチェッカーの実行
mysqlsh -- util checkForServerUpgrade
□ テスト環境の構築(MySQL 8.4)
□ アプリケーション接続テスト
- 認証方式の互換性
- SQLクエリの動作確認
- ORMやドライバのバージョン対応
□ パフォーマンステスト
□ レプリケーション構成の確認(MASTER→SOURCE用語変更)
Phase 3:本番移行
□ 移行日程の調整(関係部署への周知)
□ バックアップ取得
- オンプレ:mysqldump / xtrabackup
- RDS:手動スナップショット
□ メンテナンス時間の確保
□ 本番アップグレード実行
□ 動作確認・監視強化
□ 切り戻し手順の準備(ロールバック不可のため復元用)

このチェックリストをExcelやNotionにコピーして、進捗管理に使ってください📋
移行先:MySQL 8.4 LTS
MySQL 8.0の後継として推奨されるのはMySQL 8.4 LTSです。2024年4月にリリースされ、長期サポート(LTS)版として5年間のサポートが提供されます。
MySQL 8.0と8.4の比較
| 項目 | MySQL 8.0 | MySQL 8.4 LTS |
|---|---|---|
| リリース | 2018年4月 | 2024年4月 |
| サポート終了 | 2026年4月 | 2029年4月(予定) |
| デフォルト認証 | caching_sha2_password | caching_sha2_password |
| mysql_native_password | 利用可能 | 非推奨(デフォルト無効) |
MySQL 8.4で削除・変更された機能
移行時に注意が必要な主な変更点です。
削除された機能
mysql_native_passwordがデフォルトで無効化SHOW PROFILE構文の削除- 一部のステータス変数の削除
変更された機能
- レプリケーション用語の変更(MASTER→SOURCE、SLAVE→REPLICA)
- 新しい予約語の追加(MANUAL, PARALLEL, QUALIFY, TABLESAMPLE)
- FLOAT/DOUBLE型でのAUTO_INCREMENT使用制限
mysql_native_password からの移行手順
古いアプリケーションでmysql_native_passwordを使っている場合、MySQL 8.4では接続できなくなります。事前に認証方式を変更しておきましょう。
1. 現在の認証方式を確認
SELECT user, host, plugin FROM mysql.user;
2. 認証方式を変更
-- 個別ユーザーの変更
ALTER USER 'username'@'host'
IDENTIFIED WITH caching_sha2_password BY 'new_password';
-- 変更を反映
FLUSH PRIVILEGES;
3. アプリケーション側の対応
PHPの場合、mysqliやPDOのドライバがcaching_sha2_passwordに対応しているか確認します。PHP 7.4以降であれば通常は問題ありません。古いバージョンを使用している場合はPHPのアップグレードも検討してください。

認証方式の変更は、MySQL 8.0のうちに済ませておくとスムーズです。8.4移行時のトラブルを減らせます💡
AWS RDS / Aurora の対応状況
クラウド環境を利用している場合は、各サービスのサポート状況も確認が必要です。
Amazon RDS for MySQL
| サポート種別 | 終了日 | 備考 |
|---|---|---|
| 標準サポート | 2026年7月31日 | 追加料金なし |
| 延長サポート | 2029年7月31日 | 有料(下記参照) |
Oracle本家より約3ヶ月猶予がありますが、延長サポートは有料です。
RDS延長サポート料金の目安(2025年12月時点)
| 期間 | 料金(vCPU時間あたり) |
|---|---|
| Year 1(標準サポート終了後〜1年目) | $0.100 |
| Year 2(2年目) | $0.200 |
| Year 3(3年目) | $0.400 |
例えば、db.r5.xlarge(4 vCPU)を24時間365日稼働させた場合、Year 1で年間約$3,500の追加コストが発生します。Year 3では約$14,000になります。コストを考えると早めの移行が得策です。
Amazon Aurora MySQL
Aurora MySQLはMySQL互換エンジンですが、バージョン体系が異なります。
| Aurora バージョン | MySQL互換 | 標準サポート終了 | 状況 |
|---|---|---|---|
| Aurora MySQL 2.x | MySQL 5.7互換 | 2024年10月31日 | 終了済み |
| Aurora MySQL 3.05.x | MySQL 8.0.32互換 | 2024年10月31日 | 終了済み |
| Aurora MySQL 3.07.x | MySQL 8.0.36互換 | 2026年10月31日 | 現行推奨 |
| Aurora MySQL 3.08.x | MySQL 8.0.39互換 | 未定 | 最新 |
Aurora MySQL 3.05.x以前を使用している場合は要注意です。既に標準サポートが終了しているため、3.07.x以降への早急なアップグレードが必要です。
なお、Aurora MySQLでMySQL 8.4ベースのエンジンがいつリリースされるかは未定です。当面は Aurora MySQL 3.07.x / 3.08.x(MySQL 8.0互換)での運用となります。

Aurora MySQL 3.05.x以前を使っている場合は、MySQL 8.0 EOLより先にAuroraのサポート切れが来ています。早急に確認を⚠️
その他のクラウドサービス
- Google Cloud SQL:MySQL 8.0は2026年4月以降、順次サポート終了予定
- Azure Database for MySQL:延長サポートあり(有料)
移行前の確認事項
1. MySQL 8.0利用環境の棚卸し
まずは自社でMySQL 8.0を使用している環境を洗い出します。意外と把握できていない環境があるものです。
- オンプレミスサーバー
- クラウド(AWS RDS、Aurora、GCP、Azure)
- VPS / レンタルサーバー
- Docker / コンテナ環境
- 開発環境(ローカル、CI/CD)
- SaaS / パッケージ製品の内部DB
2. アプリケーションの互換性確認
以下の点を確認します。
- 認証方式:
mysql_native_passwordを使用していないか - SQLクエリ:削除された構文や新しい予約語を使用していないか
- ライブラリ:MySQLドライバーやORMのバージョン対応状況
- レプリケーション:MASTER/SLAVE用語を使用していないか
3. アップグレード事前チェック
MySQLにはアップグレードチェッカーが用意されています。移行前に必ず実行しましょう。
mysqlsh -- util checkForServerUpgrade
主なチェック項目は以下の通りです。
- 非推奨・削除された機能の使用
- 予約語との競合
- 文字セット・照合順序の互換性
- パーティション構成の問題
AWS RDSの場合は、コンソールから「メジャーバージョンアップグレードの事前チェック」を実行できます。

アップグレードチェッカーで問題が検出されなくても、アプリケーション側のテストは必須です💡
移行手順
オンプレミス環境の場合
1. バックアップ取得
mysqldump --all-databases --single-transaction --routines --triggers > backup_$(date +%Y%m%d).sql
2. MySQL 8.4のインストール
新規サーバーにMySQL 8.4をインストールするか、既存サーバーでアップグレードします。
3. データ移行
論理バックアップ(mysqldump)または物理バックアップ(xtrabackup)でデータを移行します。
4. アプリケーションテスト
接続確認、クエリ実行、パフォーマンステストを実施します。
AWS RDSの場合
1. スナップショット取得
RDSコンソールから手動スナップショットを作成します。アップグレード後はロールバックできないため、必ず取得してください。
2. テスト用インスタンス作成
スナップショットから新しいインスタンスを作成し、8.4にアップグレードしてテストします。
3. 本番アップグレード
RDSコンソールまたはCLIでメジャーバージョンアップグレードを実行します。
aws rds modify-db-instance \
--db-instance-identifier mydb \
--engine-version 8.4 \
--allow-major-version-upgrade \
--apply-immediately
注意:アップグレード中はダウンタイムが発生します。Multi-AZ構成でも数分〜十数分の停止が見込まれるため、メンテナンス時間を確保してください。
Aurora MySQLの場合
Aurora MySQL 3.05.x以前から3.07.x以降へのアップグレード手順です。
1. クラスタースナップショット取得
2. ブルー/グリーンデプロイメントの検討
Aurora MySQL 3.xではブルー/グリーンデプロイメントが利用可能です。本番環境のダウンタイムを最小化できます。
3. インプレースアップグレード実行
aws rds modify-db-cluster \
--db-cluster-identifier mycluster \
--engine-version 8.0.mysql_aurora.3.07.1 \
--allow-major-version-upgrade \
--apply-immediately
移行スケジュール例
2026年4月のEOLに向けた推奨スケジュールです。
| 時期 | 作業内容 |
|---|---|
| 2025年12月〜2026年1月 | MySQL 8.0利用環境の棚卸し、影響調査 |
| 2026年1月〜2月 | テスト環境構築、互換性確認、アプリ改修 |
| 2026年3月 | 本番移行(4月EOL前に完了) |
AWS RDSの場合は標準サポートが2026年7月まであるため若干余裕がありますが、延長サポートは有料のため早めの対応をおすすめします。

年度末は他の業務も立て込みます。できれば年明け早々に棚卸しを完了させておきたいですね📅
よくある質問
Q. MySQL 8.0をそのまま使い続けることはできる?
技術的には可能ですが、セキュリティパッチが提供されないため推奨しません。セキュリティ監査やコンプライアンスの観点からも問題になる可能性があります。
Q. MySQL 8.4にアップグレード後、8.0に戻せる?
いいえ。メジャーバージョンアップグレード後のダウングレードはサポートされていません。必ずバックアップを取得してから移行してください。
Q. MySQL 9.x への移行は?
MySQL 9.x はイノベーションリリース(短期サポート)です。長期運用には MySQL 8.4 LTS を選択してください。
Q. Aurora MySQLでMySQL 8.4は使える?
2025年12月時点では、Aurora MySQLにMySQL 8.4ベースのエンジンはありません。Aurora MySQL 3.07.x / 3.08.x(MySQL 8.0互換)が現行の推奨バージョンです。
Q. 延長サポートを使えば移行しなくていい?
AWS RDSの延長サポートは2029年7月まで利用可能ですが、有料です。Year 3では初年度の4倍のコストがかかります。コストと移行リスクを天秤にかけて判断してください。
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Oracle MySQL EOL | 2026年4月30日(延長サポート終了) |
| 移行先 | MySQL 8.4 LTS(2029年4月までサポート) |
| AWS RDS | 標準サポート:2026年7月31日終了、延長は有料 |
| Aurora MySQL | 3.07.x以降を推奨、3.05.x以前は既にサポート終了 |
| 主な注意点 | mysql_native_password無効化、MASTER/SLAVE用語変更 |
| 推奨対応 | 2026年1月までに棚卸し、3月までに本番移行 |
MySQL 8.0のサポート終了まで残りわずかです。まだ対応していない場合は、早急に棚卸しと移行計画の策定を始めましょう。
この記事のチェックリストを活用して、漏れのない移行を進めてください。

DB移行はアプリケーション側の影響が大きいです。開発チームや外部ベンダーと連携して、余裕を持ったスケジュールで進めましょう💪


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