そのVPN設定、いつの時代のもの?
「VPNは設定済みだから安心」と思っていませんか?
警察庁の調査によると、ランサムウェア被害の侵入経路の83%がVPN機器経由です。そして多くの場合、古い設定のまま運用されていることが原因となっています。
特にYAMAHA RTXシリーズは中小企業での導入実績が多く、10年以上前の設定がそのまま残っているケースも珍しくありません。当時は「普通」だった設定が、今では「完全にアウト寄り」になっていることがあります。

「動いているから大丈夫」が一番危険です。この機会に設定を見直してみましょう🔍
危険なVPN設定4つのチェックポイント
YAMAHA RTXのVPN設定で、特に確認すべき4つのポイントを解説します。
① 暗号アルゴリズム:3DES-CBC
設定ファイルに以下のような記述がある場合、古い暗号アルゴリズムを使用しています。
ipsec sa policy 101 1 esp 3des-cbc md5-hmac
3DES(トリプルDES)は1990年代の技術です。現在は計算能力の向上により、解読されるリスクがあります。
| 項目 | 危険な設定 | 推奨設定 |
|---|---|---|
| 暗号アルゴリズム | 3DES-CBC / DES-CBC | AES256-CBC |
② 認証アルゴリズム:MD5-HMAC
MD5は改ざん検知に使われるハッシュアルゴリズムですが、YAMAHAの公式FAQでも「改竄(かいざん)されたメッセージを検知できない可能性があります」と明記されています。
| 項目 | 危険な設定 | 推奨設定 |
|---|---|---|
| 認証アルゴリズム | MD5-HMAC | SHA256-HMAC |
③ 接続元IP:any(どこからでも接続可能)
以下のような設定は、世界中のどのIPアドレスからでもVPN接続を試行できる状態です。
ipsec ike remote address 1 any
この設定自体は、動的IPアドレスの拠点と接続するために必要な場合があります。しかし、総当たり攻撃(ブルートフォース)の標的になりやすいリスクがあります。
対策としては、接続元を固定IPに限定するか、IKEv2と証明書認証を組み合わせる方法があります。
④ PPTP:廃止推奨のプロトコル
設定にpptpという文字列がある場合、PPTPプロトコルを使用しています。
pptp tunnel disconnect time 21474836
PPTPは既知の脆弱性が多数存在し、Microsoftも2012年に使用を推奨しないと発表しています。IPsecまたはSSL-VPNへの移行が必要です。

4つのうち1つでも該当したら、早めの対策をおすすめします⚠️
現在の設定を確認する方法
YAMAHA RTXの設定を確認するには、コンソールまたはTelnet/SSHで接続し、以下のコマンドを実行します。
IPsec SAポリシーの確認
show config | grep "ipsec sa policy"
出力例:
ipsec sa policy 101 1 esp 3des-cbc md5-hmac ← 危険
ipsec sa policy 102 1 esp aes256-cbc sha256-hmac ← 安全
IKE設定の確認
show config | grep "ipsec ike"
remote address 1 anyとなっている場合、接続元IPが制限されていない状態です。
PPTPの使用確認
show config | grep "pptp"
何か出力されたら、PPTPを使用中です。
対策の優先順位と影響
すべてを一度に対応するのは現実的ではありません。以下の優先順位で対応を検討してください。
| 対策 | 難易度 | 費用 | 効果 | 通信断リスク |
|---|---|---|---|---|
| ファームウェア更新 | 低 | 無料 | 高 | あり(再起動) |
| 暗号・認証アルゴリズム変更 | 中 | 無料 | 高 | あり(両拠点同時変更必要) |
| 固定IP化 | 低 | 月額数千円 | 中 | なし |
| PPTP廃止 | 中 | 無料 | 高 | あり(クライアント設定変更必要) |
| UTM導入 | 高 | 数十万円〜 | 高 | あり(移行期間必要) |

暗号・認証アルゴリズムの変更は両拠点で同時に行う必要があります。事前に日程調整しておきましょう📅
暗号・認証アルゴリズムの変更方法
費用ゼロで効果が高い、暗号・認証アルゴリズムの変更方法を解説します。
変更前(危険な設定)
ipsec sa policy 101 1 esp 3des-cbc md5-hmac
変更後(推奨設定)
ipsec sa policy 101 1 esp aes256-cbc sha256-hmac
変更手順
1. 両拠点の担当者と日時を調整する
2. 現在の設定をバックアップする
show config > backup_YYYYMMDD.txt
3. 両拠点で同時に設定を変更する
tunnel select 1
ipsec sa policy 101 1 esp aes256-cbc sha256-hmac
save
restart
4. VPN接続を確認する
show ipsec sa
※トンネル番号(tunnel select)とポリシー番号は環境によって異なります。必ず現在の設定を確認してから作業してください。
根本対策:UTM導入という選択肢
暗号アルゴリズムの変更は応急処置です。根本的な対策としては、以下の選択肢があります。
UTM(統合脅威管理)の導入
FortiGateなどのUTMを導入すれば、VPN機能も統合できます。メリットは以下の通りです。
- 最新の暗号アルゴリズムに対応
- SSL-VPNによるリモートアクセス
- ファイアウォール・IPS・アンチウイルスの統合
- GUIでの管理が容易
クラウドVPNという選択肢
Cloudflare AccessやZscalerなど、クラウドベースのVPNサービスも選択肢の一つです。機器の管理が不要になり、ゼロトラストセキュリティへの移行も視野に入れられます。

まずは暗号アルゴリズムの変更で応急処置。その後、予算を確保してUTM導入を検討するのが現実的です💡
よくある質問
Q. 今すぐ対応しないとまずい?
「今日明日で攻撃される」とは限りませんが、攻撃者は自動化ツールで脆弱な設定のVPNを探しています。放置するほどリスクは高まります。特にランサムウェア被害の83%がVPN経由という事実は重く受け止めるべきです。
Q. 設定変更で通信断が起きる?
暗号・認証アルゴリズムを変更すると、両拠点で設定が一致するまでVPN接続は切断されます。業務時間外に作業するか、事前に関係者へ周知しておきましょう。
Q. 動的IPでも固定IP化できる?
プロバイダによっては、固定IPオプションを月額数百円〜数千円で追加できます。また、YAMAHAのネットボランチDNSサービスを使えば、動的IPでもFQDNで接続先を指定できます。
Q. remote address anyは絶対ダメ?
動的IPの拠点と接続するには必要な設定です。ただし、ipsec ike remote nameでID認証を併用し、Pre-Shared Key(事前共有鍵)を十分に複雑なものにすることでリスクを軽減できます。
まとめ
| チェック項目 | 危険な設定 | 推奨設定 |
|---|---|---|
| 暗号アルゴリズム | 3DES-CBC / DES-CBC | AES256-CBC |
| 認証アルゴリズム | MD5-HMAC | SHA256-HMAC |
| 接続元IP | any(無制限) | 固定IP or ID認証併用 |
| プロトコル | PPTP | IPsec / SSL-VPN |
YAMAHA RTXは中小企業で広く使われている信頼性の高いルーターです。しかし、設定が古いまま放置されていると、攻撃者にとって格好の標的になります。
まずは現在の設定を確認し、暗号・認証アルゴリズムの変更から始めてください。費用ゼロで、セキュリティレベルを大幅に向上させることができます。

VPNは「設定したら終わり」ではありません。定期的な見直しをお忘れなく🛡️


コメント