2026年、サイバー攻撃は「自動化」の時代へ
「AIが自動でサイバー攻撃を実行する」
2025年12月、セキュリティ大手のフォーティネットが衝撃的な予測を発表しました。2026年は攻撃者が「イノベーションよりスループットを重視する」年になるというのです。
これは「新しい攻撃手法を開発する」よりも「既存の手法で大量に攻撃する」方向へシフトすることを意味します。AIエージェントを活用した攻撃の自動化により、攻撃の速度と量が爆発的に増加すると予測されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 予測元 | フォーティネット、Google、NEC |
| 発表時期 | 2025年12月 |
| キーワード | スループット重視、AIエージェント、CaaS |
| 影響 | 攻撃の速度と量が増加、中小企業も標的に |

「うちは小さいから狙われない」は通用しません。自動化で攻撃対象が無差別に広がっています⚠️
サイバー攻撃の自動化とは?
サイバー攻撃の自動化とは、従来は人間が手動で行っていた攻撃プロセスをAIやツールが自動で実行することです。
従来の攻撃プロセス(手動)
これまでのサイバー攻撃は、攻撃者が各工程を手動で実行していました。
1. 偵察:標的企業の情報収集(数日〜数週間)
2. 侵入:脆弱性を突いて侵入(数時間〜数日)
3. 横展開:社内ネットワークを探索(数日〜数週間)
4. 攻撃実行:データ暗号化・窃取(数時間)
5. 収益化:身代金交渉(数日〜数週間)
2026年の攻撃プロセス(自動化)
AIエージェントを活用することで、これらのプロセスが半自動化されます。
1. 偵察:AIが自動でスキャン(数分〜数時間)
2. 侵入:既知の脆弱性を自動で突く(数分)
3. 横展開:環境に応じてコマンドを自動生成(数時間)
4. 攻撃実行:自動でランサムウェア展開(数分)
5. 収益化:テンプレート化された交渉(数時間)
NECのレポートによると、侵入先の環境に応じてコマンドを動的に生成するマルウェアや、検出を回避するため定期的にコードを変異させる手法がすでに報告されています。

攻撃にかかる時間が「週単位」から「時間単位」に短縮。対応する時間的余裕がなくなっています😰
なぜ自動化が進んでいるのか
サイバー攻撃の自動化が進む背景には、3つの要因があります。
1. CaaS(Crime as a Service)の拡大
サイバー攻撃ツールが「サービス」として販売されるようになりました。技術力のない攻撃者でも、お金を払えば高度な攻撃を実行できます。
→ 関連記事:CaaS(Crime as a Service)とは?サイバー攻撃が「サービス化」される時代を解説
2. 生成AIの悪用
生成AIを使ってマルウェアを作成・改良する事例が増えています。2025年には、ChatGPTを悪用してサイバー攻撃を自動化するプログラムを作成した高校生が逮捕されました。
Googleの予測によると、2026年は攻撃者が「AIファースト」に移行し、生成AIの悪用がさらに拡大するとされています。
3. 攻撃の分業体制
偵察、侵入、攻撃実行、交渉、資金洗浄がそれぞれ専門業者によって分業化されています。各工程が効率化され、攻撃全体のスピードが上がっています。
| 要因 | 影響 |
|---|---|
| CaaSの拡大 | 技術力不要で攻撃可能に |
| 生成AIの悪用 | マルウェア作成・改良が容易に |
| 攻撃の分業化 | 各工程が効率化、スピードアップ |
中小企業が狙われる理由
攻撃の自動化により、中小企業が標的になりやすくなっています。
1. セキュリティ投資の不足
大企業と比較して、セキュリティ対策への投資が十分でないケースが多いです。攻撃者は「侵入しやすい組織」を自動でスキャンして見つけます。
2. サプライチェーン攻撃の踏み台
大企業への攻撃の「入口」として、取引先の中小企業が狙われます。2022年の小島プレス工業の事例では、サプライヤーへの攻撃がトヨタの工場停止につながりました。
3. 「狙われない」という油断
「うちは小さいから」「業界が違うから」という油断が最大のリスクです。トレンドマイクロによると、攻撃者は「業種・組織規模に関係なく、侵入できる隙がある組織に侵入する」とされています。

自動スキャンで「隙のある企業リスト」が作られます。そこに載らないことが重要です🔒
今すぐ取るべき5つの対策
サイバー攻撃の自動化に対抗するため、中小企業が今すぐ実施すべき対策を紹介します。
対策1:多要素認証(MFA)の導入
費用:無料〜低コスト
認証情報が漏洩しても、MFAがあれば侵入を防げます。以下のサービスには必ず導入してください。
【MFA必須の対象】
・VPN接続
・リモートデスクトップ(RDP)
・Microsoft 365 / Google Workspace
・クラウドストレージ
・社内システムの管理画面
【推奨】
・SMS認証より認証アプリ(Microsoft Authenticator等)を推奨
・管理者アカウントは最優先で導入
対策2:VPN機器のファームウェア更新
費用:無料
警察庁の調査によると、ランサムウェア侵入経路の83%がVPN/RDP経由です。VPN機器のファームウェアを最新に保つだけで、侵入リスクを大幅に下げられます。
【確認チェックリスト】
□ VPN機器のファームウェアは最新か
□ 既知の脆弱性(CVE)に対応済みか
□ デフォルトパスワードは変更済みか
□ 不要なポートは閉じているか
□ ログは取得・保存しているか
【更新頻度】
・月1回はメーカーサイトで更新確認
・緊急の脆弱性情報は即座に対応
対策3:バックアップの3-2-1ルール
費用:中程度
ランサムウェアに感染してもデータを復旧できるよう、バックアップを強化します。
【3-2-1ルール】
・3つ:データのコピーを3つ持つ(本番 + バックアップ2つ)
・2種類:2種類の異なるメディアに保存(HDD + クラウド等)
・1つ:1つはオフライン(ネットワークから物理的に切り離す)
【追加推奨】
・イミュータブルバックアップ(書き換え不可)の検討
・復旧テストを四半期ごとに実施
対策4:従業員教育の定期実施
費用:低コスト
技術的な対策だけでなく、従業員の意識向上も重要です。特に以下の新しい攻撃手口への注意喚起を行ってください。
【周知すべき内容】
・フィッシングメールの見分け方
・不審なリンクをクリックしない
・画面の指示でコマンドを貼り付けない(ClickFix攻撃対策)
・不審な画面が出たらすぐに情シスに連絡
【実施頻度】
・四半期ごとに注意喚起メール
・年1回はフィッシング訓練を実施
→ 関連記事:偽のブルースクリーンでマルウェア感染|ClickFix攻撃の手口と社内対策
対策5:EDR/XDRの導入検討
費用:高め(ただし被害額と比較すれば安い)
従来のウイルス対策ソフトでは、自動化された攻撃を防ぎきれません。EDR(Endpoint Detection and Response)やXDR(Extended Detection and Response)の導入を検討してください。
| 項目 | 従来のウイルス対策 | EDR/XDR |
|---|---|---|
| 検知方法 | 既知のマルウェアをパターンで検知 | 不審な挙動を検知 |
| 対応 | ブロックのみ | 検知・調査・対応まで |
| 未知の攻撃 | 検知困難 | 挙動ベースで検知可能 |
| 運用 | 自社で完結 | マネージド型推奨 |
中小企業には、自社での運用が不要なマネージドEDR/XDRがおすすめです。月額数千円〜で導入できるサービスもあります。

まずは費用ゼロのMFAとVPN更新から。これだけで侵入リスクを大幅に下げられます💪
対策の優先順位
すべてを一度に実施するのは難しいため、優先順位をつけて対応しましょう。
| 優先度 | 対策 | 費用 | 効果 | 実施目安 |
|---|---|---|---|---|
| ★★★ | MFA導入 | 無料〜低 | 高 | 今すぐ |
| ★★★ | VPN更新 | 無料 | 高 | 今すぐ |
| ★★☆ | バックアップ強化 | 中 | 高 | 1ヶ月以内 |
| ★★☆ | 従業員教育 | 低 | 中 | 四半期ごと |
| ★☆☆ | EDR導入 | 高 | 高 | 予算確保後 |
経営層への説明テンプレート
セキュリティ対策の予算を確保するには、経営層への説明が必要です。以下のテンプレートをご活用ください。
【サイバー攻撃の現状報告】
■ 現状認識
・2026年、AIによるサイバー攻撃の自動化が本格化
・攻撃の速度と量が爆発的に増加する見込み
・中小企業も大企業への踏み台として標的に
・被害発生時の賠償は10億円規模の事例あり
■ 当社のリスク
・現状未対策の項目:〇〇、〇〇
・被害発生時の想定損害額:〇〇円
・取引先への影響:〇〇
■ 対策案と費用
┌─────────────┬──────────┬──────────┐
│ 対策 │ 費用/年 │ 効果 │
├─────────────┼──────────┼──────────┤
│ MFA導入 │ 〇〇円 │ 侵入防止 │
│ VPN更新 │ 無料 │ 侵入防止 │
│ バックアップ │ 〇〇円 │ 復旧可能 │
│ EDR導入 │ 〇〇円 │ 検知・対応 │
└─────────────┴──────────┴──────────┘
■ ご判断いただきたいこと
・上記対策の実施可否
・予算〇〇円の確保可否
・実施時期の承認
■ 対策しない場合のリスク
・業務停止による機会損失:〇〇円/日
・個人情報漏洩時の対応費用:〇〇円
・取引先からの損害賠償請求リスク
・社会的信用の失墜

「被害額」と「対策費用」を比較すると、経営層も判断しやすくなります📊
よくある質問
Q. 本当に中小企業も狙われる?
はい、狙われます。攻撃の自動化により、攻撃者は「侵入しやすい企業」を自動でスキャンして見つけます。規模や業種は関係なく、セキュリティの隙があるかどうかが基準です。また、大企業への攻撃の踏み台として中小企業が狙われるケースも増えています。
Q. 対策にどれくらい費用がかかる?
MFA導入とVPN更新は無料または低コストで実施できます。まずはこの2つから始めてください。EDR/XDRは月額数千円〜数万円ですが、被害発生時の損害(数億円規模)と比較すれば十分に投資価値があります。
Q. ウイルス対策ソフトだけでは不十分?
残念ながら不十分です。自動化された攻撃は、ウイルス対策ソフトの検知を回避する機能を持っていることが多いです。また、ユーザー自身がコマンドを実行する攻撃(ClickFix攻撃など)は、ウイルス対策ソフトでは止められません。多層防御が必要です。
Q. 一人情シスでも対策できる?
できます。まずは費用ゼロでできる対策(MFA、VPN更新)から始めてください。EDR/XDRはマネージド型を選べば、自社での運用負担を軽減できます。また、経済産業省が2026年度末に企業のサイバー対策を評価・認定する制度を開始予定なので、それに向けた準備も意識しておくとよいでしょう。
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 2026年の脅威 | AIによるサイバー攻撃の自動化が本格化 |
| 攻撃者の方針 | 「イノベーションよりスループット重視」 |
| 中小企業のリスク | 自動スキャンで標的に、サプライチェーン攻撃の踏み台 |
| 最優先対策 | MFA導入、VPN更新(費用ゼロで効果大) |
| 次の対策 | バックアップ強化、従業員教育、EDR導入 |
2026年、サイバー攻撃は「技術力のある攻撃者による標的型攻撃」から「自動化された大量攻撃」へと変化します。
「攻撃されるかどうか」ではなく「いつ攻撃されるか」の時代です。今のうちに基本的な対策を固めておきましょう。

費用ゼロでできる対策から始めましょう。備えあれば憂いなし🛡️


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