はじめに
「紙でいいんだよ」「パソコンだと逆に手間になる」──これは、ある運送会社で社内SEとしてシステム導入を進めていた時に、実際に現場から投げかけられた言葉です。効率化を目指してデジタル化を進める一方で、紙の運用の方が優れているという現場の感覚には、一理あることも確かです。
本記事では、現場の声と管理層の方針の間で揺れた一例として、紙vsデジタルのリアルなやり取りと、最終的に導入した“納得できるシステム”についてお話しします。
現場の声:「紙の方が早い」
1. 運送会社での実話
ある中堅の運送会社では、配送伝票や日報の記録を手書きで行う文化が根強く残っていました。ドライバーたちからは、「どうせ回収するんだから紙で十分」「打ち込む時間がもったいない」といった声もありました。
2. 紙のメリットは実際にある
紙のメリットは無視できません。書き込みの自由度、電源不要、即時性など、デジタルでは代替しにくい利便性があります。特に移動中や立ったままの記録などでは、タブレットやノートPCより紙が圧倒的に扱いやすい場面も多いのです。
管理層の課題感:「見えないことが怖い」
一方、管理層からは「現場の情報がブラックボックスになっている」「集計に時間がかかり、全体像がつかみにくい」という悩みがありました。紙ベースの運用は短期的には便利でも、長期的には情報の分析・活用を妨げる要因になるのです。
見える化への要望
「せめて数字だけでもデータとして可視化できないか?」「月末の報告書を自動で作れるようにしたい」──そんな声が上がるようになり、現場とのギャップを埋める必要性が浮き彫りになりました。
導入した解決策
1. 入力負担を減らす設計
まず意識したのは、「紙のメリットを残しつつ、デジタルの恩恵を加える」という視点です。テンプレート機能を取り入れた記録アプリを構築しました。
2. 「紙から始めてデジタルへ」段階的アプローチ
完全なペーパーレスを求めるのではなく、まずは紙で記入した内容をスマホで撮影→AI-OCRで読み取り、という運用にしました。これにより、現場は紙の感覚のまま記録しつつ、管理側はデータで集計・分析できるようになりました。
まとめ
紙が良い、パソコンが良いという議論は、どちらかを否定するものではなく、両者の利点を活かす“折衷案”が存在します。実際の現場では、単に「システム化すればOK」という話では済まず、「どうやって現場の習慣を活かしながら変化させるか」が最大の課題となります。
今回の運送会社での事例では、紙に慣れた現場の感覚を尊重しつつ、データを求める管理層の要望に応える“段階的なシステム導入”が功を奏しました。社内SEにとって重要なのは、単なる技術導入ではなく、関係者全体の合意形成と納得を引き出す“対話力”と“共感力”です。
業務改善とは、システム導入ではなく“現場と未来の橋渡し”なのだと、改めて感じたプロジェクトでした。

紙かパソコンか…迷ったときこそ、現場の声と未来のビジョンをつなげるチャンスかもしれませんね📄💻 私も「まず現場を否定しない」ってすごく大事だと学びました!
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